クラシック用語辞典

あ行

  • アウフタクト

    独語。強拍から始まる音楽。ドイツ語では最初の小節線より前の音符を「Auftakt」と呼び、英語では「Upbeat」と呼ぶ。指揮するときの棒の動きに由来した用語。

  • アタッカ

    伊語。楽章の終わりに書かれ、間を置かずにすぐに次の楽章に入ること。イタリア語で「襲え」「続けよ」を意味する。

  • アリア

    元々は「空気」「雰囲気」「歌」の意味。オペラ、オラトリオ、カンタータなどの中で歌われる。レチタティーヴォと対を成し、抒情的に歌い上げるものを呼ぶ。

  • アルコ

    イタリア語で「弓」。弦楽器でピツィカート(弓で弾く代わりに指で弦をはじく奏法)などの後、再び弓を使う奏法に戻る指示。

  • アルペジオ

    伊語。分散和音の一種。和音を下から(あるいは上から)順に演奏すること。波打つような記号で表記される。

  • アンサンブル

    仏語。1)2人以上の演奏者による合唱または重唱。2)演奏のバランスや統一感についての表現。「アンサンブルが良い・悪い」といったふうに慣用的に使われる。

  • アンダンテ

    伊語。元々は「平凡な」「気取らない」の意。速度を表す標語で、アレグレットとアダージョの中間のテンポ。歩くように、適度に穏やかな速度で。

  • インテルメッツォ

    間奏曲。オペラなどの幕間に演奏される器楽曲。独立した短い器楽曲にこの名がつけられたものもある。

  • ヴォカリーズ

    歌詞をともなわず、母音のみによって歌う歌唱法。フランス語の動詞vocaliser(声にする、声だけで歌う)の命令形vocaliseに由来する。有名なラフマニノフの曲のほか、コープランド、メシアンなどもヴォカリーズを書いた。

  • エチュード

    練習曲。さまざまな楽器の演奏技巧を習得する目的で書かれた楽曲。チェルニーの教則本から、ショパン、シューマン、リストの演奏会用の高度なエチュードまでさまざまな作品がある。

  • エレジー

    フランス語で「悲歌」。悲しみの詩や死者の哀悼の詩、またはそれらの詩につけられた歌をいう。それらを器楽曲に編曲したものもエレジーと呼ばれる。フォーレやラフマニノフの作品が有名。

  • オーケストラ

    管弦楽、または管弦楽団のこと。管楽器、弦楽器、打楽器を使って演奏される音楽の総称と、その楽器編成による演奏集団。略して「オケ」。

  • オーケストレーション

    オーケストラ演奏用の編曲。管弦楽の楽器の編成法。管弦楽法。楽器の組み合わせ方、音色、音量の対比のさせ方などが重要で、ベルリオーズ、リムスキー=コルサコフ、R・シュトラウスが著書を残している。

  • オペラ

    演劇と音楽によって構成される舞台芸術。「歌劇」とも呼ばれる。イタリア語で「仕事」「作品」を意味し、同じ意味をもつラテン語の「opus」の複数形主格「opera」に由来する。

  • オペレッタ

    「小さいオペラ」の意で、日本語では「軽歌劇」と訳されたこともあった。対話体のせりふをもち、舞踊を取り入れた大衆的な作品が多い。アメリカに渡ったオペレッタを母体としてミュージカルが生まれた。

  • オラトリオ

    宗教的な内容をもつ長い物語を、独唱・合唱・管弦楽のために構成した作品のこと。17世紀のイタリアで発生し、18世紀にイギリスとドイツで芸術的な頂点に達した。

か行

  • カーテンコール

    オペラ、バレエ、演劇、ミュージカルなどにおいて歌手、ダンサー、俳優、指揮者、演出家が舞台上に現れて観客に挨拶すること。カーテン(幕)の仕切りがないオーケストラの演奏会でも「カテコ」と呼ばれ同じ意味をもつ。

  • カデンツァ

    協奏曲やオペラ・アリアなどで、独奏楽器や独唱者がオーケストラの伴奏をともなわずに、自由に即興的な演奏・歌唱をする部分のこと。やがてカデンツァは楽譜に書き残され、ひとつの協奏曲に複数のカデンツァが残されていることも多い。

  • カノン

    複数の声部が同じ旋律を異なる時点からそれぞれ開始して演奏する様式の曲。一般に「輪唱」と訳されるが、同じ旋律を追唱する輪唱に対し、カノンはリズムが二倍になったり、上下または時間の前後が逆になったりする特殊なものも含む。

  • 間奏曲

    「インテルメッツォ」とも呼ぶ。オペラなどの幕間に演奏される器楽曲。また、単に独立した短い器楽曲にこの名がつけられることもある。

  • カンタータ

    イタリア語のカンターレcantare(「歌う」の意)に由来。バロック時代の声楽形式のひとつで、アリア、レチタティーヴォ、二重唱、合唱などから成る。歌詞の内容によって「世俗カンタータ」と「教会カンタータ」に分けられる。

  • カンタービレ

    「歌うように」「なめらかに」「自然に」「表情豊かに」を示す音楽用語。または、歌うような調子のメロディーの美しい楽曲のこと。

  • 協奏曲

    コンチェルト。独奏楽器とオーケストラが合奏する形式の楽曲。バロック時代のコンチェルト・グロッソから発展し、古典派時代にはソロ・コンチェルトの新たな形式を生み出した。ロマン派を経て、近・現代では多様化したスタイルが見られる。

  • クァルテット

    4人の奏者による室内楽。または4人の歌手たちによる重唱。弦楽四重奏をはじめ、弦楽3部とピアノの組み合わせなど。デュオ(2人)、トリオ(3人)、クインテット(5人)、セクステット(6人)、セプテット(7人)、オクテット(8人)。

  • グリッサンド

    高さの異なる2音間を、連続的に滑るように演奏すること。ピアノでは普通、指の背で鍵盤上を速く滑らせる。弦楽器、管楽器、ハープ、木琴などでも多用される。

  • 組曲

    いくつかの小曲を、ある意図のもとに集めた器楽曲のこと。バロック時代ではいくつかの舞曲を組み合わせた古典組曲、それ以後は近代組曲が生まれた。近代組曲はさまざまな性格の楽曲を自由に組み合わせたものが多い。

  • ゲーペー(ゲネプロ)

    ドイツ語の「Generalprobe(ゲネラルプローベ)」の略。初日の前に行われる総仕上げ的な舞台稽古。基本的に本公演といっさいが同じ手順で行われる。

  • 幻想曲

    ファンタジー。形式にとらわれず楽想のおもむくままに作られた器楽曲。即興的性格の強いものも含む。ロマン派では幻想的・夢想的な性格をもつ小品を指し、シューベルト、ショパン、シューマンの作品がある。

  • 交響曲

    管弦楽のためのソナタのこと。前古典派のシンフォニアを経て古典派のハイドンによって確立され、モーツァルト、ベートーヴェンによって完成された多楽章形式の楽曲。

  • 交響詩

    管弦楽による標題音楽の一種。詩など文学的な、あるいは絵画的な内容を表そうとするもの。多くは単一楽章。リストが創始し、R・シュトラウス、スメタナ、シベリウスなどロマン派時代に多くの名曲が書かれた。

  • コーダ

    ひとつの楽曲や楽章、または楽曲中の大きな段落の終わりに、終結の効果を強めるために付け加える部分。Codaの意味は「結尾」。エンディングに向かうという意味。

  • コルレーニョ

    イタリア語で「木で(col legno)」の意味。ヴァイオリン属などの弓で弾く弦楽器における特殊奏法。弓の毛ではなく、木製の棹の部分を用いて音を出す奏法。

  • コンマス(コンミス)

    コンサートマスターの略。女性をコンサートミストレス(コンミス)と呼ぶこともあるが、最近は性別関係なくコンマスと呼ばれる傾向が大きい。第一ヴァイオリンのトップ奏者で、オケ全体の舵取り、指揮者の指示を奏者全員に伝達する役割。

さ行

  • 室内楽

    元々は王侯貴族の居間で奏する少人数の合奏を指した。古典派以降は弦楽器、管楽器、ピアノなどによる少人数の合奏で、弦楽四重奏をはじめ多くの編成がある。

  • シンコペーション

    強拍と弱拍の通常の位置関係を変え、音楽のリズムに緊張感を生み出す手法。一般に、弱拍の音を次に続く同じ音程の強拍の音とタイで結ぶことによって作り出す。ポップスなどにも多用される。

  • 吹奏楽

    木管楽器、金管楽器を中心とした合奏のこと。打楽器やコントラバスが加わることもある。ブラス・バンド(brass band・英)とは本来金管バンドを指すが、日本では吹奏楽団を指すことがある。

  • ソナタ

    イタリア語で「鳴り響く」の意の「ソナーレ」が語源。16-17世紀には「器楽曲」を指した。バロック時代には、複楽章の器楽曲を指し、古典派時代以降は3-4楽章構成の器楽独奏曲をおもに指す。

  • ソナチネ

    小規模なソナタ。バロック時代には単に短い器楽曲のことを指し、古典派時代以降は「短いソナタ」を指すようになった。楽章数は2楽章あるいは3楽章であることが多い。

  • ソルフェージュ

    西洋音楽の学習において、楽譜を読むことを中心とした基礎訓練。この訓練を通じて得られる読譜能力を「ソルフェージュ能力」と呼ばれる。本来は、楽譜を母音またはドレミ音節で歌う声楽訓練を意味する。

た行

  • タチェット

    ラテン語(tacet)で「音を出さない」という意味。一般にはオーケストラなどの楽譜で、特定の楽器に対して比較的長い休止を指示する場合に使う。同じ意味の音楽用語にイタリア語の「tace(ターチェ)」がある

  • 短調

    短音階に基づく調。マイナー・キー(英)、モール(独)。

  • チャイコン

    チャイコフスキーが書いたコンチェルト全般(ピアノ、ヴァイオリン等)を示すこともあり、4年に一回モスクワとサンクトペテルブルクで開催されるチャイコフスキー国際音楽コンクールのことも略してこう呼ぶことがある。

  • 長調

    長音階に基づく調。メジャー・キー(英)、ドゥア(独)。

  • ディヴィジ

    「分けて」の意。オーケストラの総譜などにおいて、同じパートの奏者の片方が上の声部、もう片方が下の声部に分かれて演奏する指示をする際に用いる。楽譜上では「div.」と表記されることもある。

  • トッカータ

    イタリア語の動詞「toccare(触れる)」に由来した言葉。1)17~18世紀前半に広く行われた鍵盤楽器のための楽曲形式。即興的な要素が強く自由な構造をもつ。2)17世紀に用いられた金管楽器のためのファンファーレ風の性格をもつ小楽曲。

  • ドボハチ

    アントニン・ドヴォルザーク(1841~1904)が1892年に発表した『交響曲第8番ト長調作品88』を略した呼称。(用例:「今日はサントリーで、後半はドボハチだね」

  • トラ代

    オーケストラの業界用語で、エキストラに支払うギャランティのこと。

  • ドレスリハーサル

    『ゲネプロ』と同意

な行

  • ノクターン

    夜想曲。アイルランドのピアノ奏者ジョン・フィールドが創始し、ショパンが完成の域に高めた。形式的な制約はなく、夢想的で瞑想的な性格をもつ。

は行

  • バンダ

    イタリア語でバンドの原義。オーケストラなどで、本来の編成とは別に、多くは離れた位置で演奏する小規模のアンサンブル。

  • ピッツィカート

    ヴァイオリン属などの、本来は弓で弾く弦楽器(擦弦楽器)の弦を指ではじくことによって音を出す演奏技法。

  • ピリオド奏法

    古楽奏法。曲が作られた当時の奏法。バロックやそれ以前の音楽、あるいはモーツァルトやベートーヴェンでも「当時の」スタイルを再現すべく、モダン(現代)とは異なる奏法で演奏されることがある。楽器・演奏方法については一言では語れないほど細かく詳しい世界。

  • フーガ

    「逃亡・逃走」の意味。主題が他の声部に次々と規則性をもって模倣反復されていく、高度な対位法技法による楽曲。J.S.バッハによって芸術的に高められた。

  • ブライチ

    ヨハネス・ブラームス(1833~1897)が書いた『交響曲第1番ハ短調作品68』の略。用例:)「明日のリハーサルのためにブライチの譜読みをやっておこう」「ブライチのいい録音知らない?」

  • フライングブラボー

    曲が終わり、指揮者のタクトが下ろされる前にフライング気味に放たれるブラボー。「フラブラ」と略されることも。演奏の余韻を最後まで楽しみたい聴衆のために、最近では開演前に、暗示的にフラブラを控えるアナウンスがされることも多い。

  • プロンプター

    舞台芸術や講演などにおいて、台詞や講演内容を失念してしまい混乱することがないようあらかじめ配置された人あるいは装置。オペラなどでは歌手に歌い出しの合図を送る役割も担う。

  • ベトシチ

    ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)が1811年から1812年にかけて書いた『交響曲第7番 イ長調Op.92』の日本語の略称。コミック「のだめカンタービレ」で有名になった。

  • ベル

    オーケストラで使うベルには、チューブラーベル(チャイム)、カウベルなど様々なものがあり、グロッケンシュピールなどの鍵盤打楽器も「オーケストラ・ベル」と呼ばれる。

ま行

  • マウスピース

    管楽器(気鳴楽器)において口を当てて息を吹き込む部分の部品。

  • マラゴ

    グスタフ・マーラー(1860~1911)が絶頂期の41歳で書いた『交響曲第5番 嬰ハ短調』の日本語の略称。用例:)「マラゴのアダージェットが大好きなんです」

  • ミサ曲

    ミサの各種典礼文につけられた曲。典礼文はミサ固有文とミサ通常文に分けられ、両方とも本来、単旋律のグレゴリオ聖歌によって歌われた。15世紀頃からミサ曲は、一般に5つのミサ通常文を一貫して多声的に作曲したものを指すようになった。

  • ミュート

    英語で「音声を出さない」「無音・無言の」を意味する。1)ギターなどの弦楽器における演奏技法のひとつ。2)楽器に内蔵または取り付ける消音器・弱音器のこと。

  • メンコン

    フェリックス・メンデルスゾーン(1809~1847)が1844年に書いた『ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品44』の日本語の略称。メンデルスゾーンは他にもニ長調のヴァイオリン協奏曲、4曲のピアノ協奏曲を書いているが「メンコン」がそれらを指すことはあまりない。用例:)「テツラフが弾くメンコンは超かっこいいね」

  • モツレク

    ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)が最晩年に書いた未完の『レクイエム 二短調』の日本語の略。用例: )「ショパンやケネディの葬儀で使われた曲は何?」「モツレクでしょ」

や行

  • ユニゾン

    英語。同音のことで、2つ以上の楽音の一致をいう。いくつかの声や楽器、またオーケストラ全体が同じ音(オクターヴを含むこともある)やメロディを奏すること。

ら行

  • ラプソディ

    狂詩曲。自由奔放な形式で、民族的または叙事的な内容を表現した楽曲。フランツ・リストが書いた全19曲の『ハンガリー狂詩曲』、ガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』が有名であるほか、サン=サーンス『オーヴェルニュ狂詩曲』ドヴォルザーク『スラヴ狂詩曲』、ディーリアス『アメリカ狂詩曲』など多数存在する。

  • レクイエム

    ラテン語で「安息を」という意味。1)死者の安息を神に願うカトリック教会のミサ。死者のためのミサ。2)上記のミサで用いる聖歌。3)本来の典礼から離れて。単に「葬送曲」「死を悼む」という意味で銘された作品。

  • ロンド形式

    楽曲の形式のひとつ。異なる旋律を挟みながら、同じ旋律(ロンド主題)を何度も繰り返す形式。「輪舞曲」「回旋曲」。

わ行

  • ワルツ

    円舞曲。テンポの良い淡々とした舞曲。3拍子が一般的である。南ドイツ(ハプスブルク帝国)起源で、13世紀頃から今日のチロル州とバイエルン州の農民が踊っていたヴェラー(Weller)というダンスから成立した。

Text:Hisae Odashima